第23回公演
2019年11月上演
至:「絵空箱」
教会のみえる川辺で
作 :しゅう史奈
演出:小松幸作
彼は何をしたのか 何をしなかったのか
川沿いのホテル「リバーハウス」の経営者麻衣子に届けられた数通の手紙。それは彼女の知らない夫博之の想像を超えた過去を知らせるものだった・・・
鈴木達也
荒木めぐみ
野村はるな
宮藤詩帆
伊東彩
松下正嗣
長谷川友絵
北村博之
照明/村上 秀樹(回転OZORA)
音響/金子 翔一
宣伝美術/荒巻 まりの
舞台監督/武田 佐京
制作/翠-sui-、海市制作部
明るい日に
しゅう史奈
「教会のみえる川辺で」を書いたのは、叔父が急逝したことがきっかけでした。
衣装にでも使ってと母から届けられた箱には、デザイナーズのシャツやスーツ、 カシミアのセーターや羽根つきのフェルト帽など、およそ私が抱いていた叔父 のイメージに合わない遺品が詰まっていたのです。
彼の、無邪気な笑顔や、饒舌ないつか、お洒落して出かけたある日の光景が見たことのように私の頭に広がりました。
身内とも疎遠だった叔父の「その瞬間」に思いを巡らせたとき、最期の映画をテーマにしたドラマを書こうと決めたのです。
母によるとわたしは、待って待って11月の明るい日に生まれたそうです。
なんだか自分が意味のある存在に思えて、本当にそうなりたくて、自信がなくなると心に言い聞かせます。
待って待って明るい日に生まれたわたし。
みんな、誰もが、きっとそうなのだと思います。
生きてきた過去を思い、生きている今をみつめ、そして・・・生きて行く未来を信じて物語を紡ぎました。
2度とやってこない今の瞬間を皆さんと共有できたら幸せです。
末尾になりますが、劇中の「14年前」は2009年の初演ままであることを書き添えます。
ご挨拶
小松幸作
本日はご来場いただきましてありがとうございます。
「教会のみえる川辺で」は10年振りの再演となります。
初演のパンフレットを引っぱり出すと、そこに私は、 『人は誰も、心の中に忘れられないワンシーンを持っています。
普段は忘れたつもりでいても、脳のどこかにきちんと刻みこまれているらしいのです・・・』
と書き、幼いころ母に連れられていった喫茶店で父らしき男性に会った、切れ切れだけれど鮮明な記憶を綴っていました。
懐かしく読むと同時に、あれっと胸をつかれました。頭を捻ってこの文章を書いた時さえ、今は思い出。渾身の力でつくった舞台もそうして長い時を隔ててしまったのです。
時の流れの残酷さに改めて気づく思いです。
時間は誰にも食い止められない。父の弱々しい目や母の沈黙も、そして今この瞬間も過去になっていく。自分も世の中も刻々と変化していく。
だからこそ大切なのだな、と今は10年前よりわかります。
作者の言葉を信じ、役者たちと共に最後まで取り組んできました。
この世界を感じていただければ幸いです。
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下北沢「劇」小劇場
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